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“祭典”の前後で思いは変わる?

いよいよ本日(7/23)夜、東京オリンピック開会式を迎えます。

コロナ対策だけでなく、運営のあり方など、
まあ、世上とかく言われていますし、
私も思うところはいろいろありますけど、
それはそれとして、やる以上は、
選手のみなさんには力を出し切ってほしいです。
個人的には、批判は批判、応援は応援であって、
別次元の問題だと考えています。

【歴史は繰り返すのか】

先日NHKで、前回の東京オリンピックがテーマの
『映像の世紀プレミアム第15集 東京 夢と幻想の1964年』
が再放送されました。

私はその頃生まれていませんが、戦後20年、
日本の復興を世界にアピールする大イベントが行われた、
という感じで漠然と捉えていました。

確かに、新幹線や首都高、モノレール、大型ホテルなどが
急速に整備され、東京は大改造されました。
オリンピックという大義名分がなければ、
これほど早く進まなかったのは間違いないでしょう。

ただその反面で、さまざまな歪みがあったことも事実。
決して「オリンピック万歳!」一色ではありませんでした。

開催年(1964年)の6月、NHKが都民1,500人に行った世論調査では、
「近頃どんなことに一番関心があるか?」という問いに、
オリンピックと答えた人はわずか2.2%にとどまり、
「他にするべきことがあるはず」と答えた人は58.9%にのぼりました。

背景には、深刻な水不足がありました。
実体験としてご記憶の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

同年夏、東京は史上まれに見る渇水状態に陥りました。
空梅雨、70年ぶりの猛暑という気候的要因に加え、
終戦時に350万人だった東京の人口が1千万人を突破し、
需要に供給が追いついていない事情もありました。

7月中旬、東京都は1日12時間の断水を伴う給水制限に踏み切ります。
「東京砂漠」と言われる試練が都民に降りかかりました。
オリンピックどころではありません。

「大江戸と云う名の砂漠で五輪待ち」
街は、このような都政への皮肉や恨み言であふれました。
以下は、東京都水道局に寄せられた苦情です。

――高級ホテルのプールが公開されている。
この水不足の最中で、どうしてこんなことが許されているのか。
一部特権階級のため見逃すなら、都民は節水に協力しなくなるだろう。
対策を望む――

何という既視感でしょう。
1964年の人々の怒声が、コロナで苦しむ2021年にも
そのまま響いてくるようです。

その後、待望の雨が降り、水不足も解消され、
オリンピックに多くの国民が熱中することになります。
閉幕間近の女子バレーボール優勝時には、日本中が歓喜に包まれました。
平均視聴率は66.8%。
今でも歴代スポーツ中継視聴率ランキングのトップです(ちなみに2位は
2002年サッカーワールドカップの日本vsロシア戦で66.1%)。

閉会式では、開会式同様、国別に行進する予定のはずが、
各国の選手が入り混じって自由に歩き回ります。
これこそオリンピック精神だと語り草になりました。

そしてその後、高揚の反動のように不況で苦しむことに……。

さて、今年のオリンピック・パラリンピック。
まずは全日程が無事に終わってほしいと願います。
今のところ私には、いかにマイナスが少なく済むかという、
沈んだイメージが勝っているのが悲しいですけれども、
閉会式を迎える頃には、どうなっていることでしょうか。

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