【個人的には「鬼」推し】
先日、今年の流行語大賞は「3密」と発表されました。
言わずと知れた新型コロナ関連用語で、私も納得の受賞です。
そして来たる12/14、恒例の「今年の漢字」が発表されます。
こちらも新型コロナ関連で、「禍」や「密」等が有力視されています。
ちなみに昨年は、新元号令和の「令」でした。
「密」は流行語大賞と重複感があるので、「禍」が有力かとも思いますが、
私は「鬼」を推したいです(他にもいらっしゃるでしょう)。
もちろん、今年の日経MJヒット商品番付で東の横綱に選ばれた
大ヒット中の『鬼滅の刃』も念頭にあります。
加えて、新型コロナ禍の中で、
一時的にマスク争奪戦が勃発したり、
意味のない買い占め騒動が起こったり、
「自粛警察」と言われるほど感染抑制に過剰反応したり、
逆にコロナを警戒する人たちを「コロナ脳」とバカにしたり、
「うつされる」ことはそれなりに意識しても、
「うつす」ことには恐ろしいほど無頓着だったり、
感染の最前線に立ち続けている医療従事者だけでなく、
その家族までを「危ない」と差別したり、
実際に感染した人を白い目で見たり、
感染者がそうした社会的スティグマ(烙印)に疲弊したり、
感染者への差別・処遇を嫌がって、
PCR検査で陽性とわかっても逃避したり、
そもそもPCR検査を忌避したり……
まあとにかく、なんですか、
「心を鬼にして~」とか言いますが、
あえてそんなことしなくても、
人間の“鬼”の部分が例年以上に
露呈したのではないでしょうか。
問答無用で排他的・利己的、不寛容で偏狭になるのは、
長い進化の歴史で人間が獲得してきた(つまりは生き残ってきた)
本能のようなものという説があります。
感染症のような命に関わることならなおさらです。
だとするなら、現代に生きる者としては、
そもそも内にいる滅することのできない“鬼”に
簡単に全服従せず闘っていく決意も込めて、
今年の漢字を「鬼」と予想したいと思います。
【価値観と感情の衝突】
前回取り上げた橘玲『文庫改訂版 事実vs本能
目を背けたいファクトにも理由がある』に、興味深い話がありました。
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例えばヘビを差別しない社会を目指すとなったとして、
教育でそれを教え込まれても、
ヘビを見たときの気持ち悪さを抑え込むことはできない。
この矛盾を解消しようとすれば、
自分を「不道徳」な存在として断罪するか、
「ヘビを差別する自分は正しい」と開き直るしかない。
前者は、やがてその感情を他者に投影し、
あらゆる「差別」を血眼になって探し、
相手を批判することで自身の「正義」を証明しようとするだろう。
後者は、それを「偽善」と罵り、自己正当化に使える
ありとあらゆる理屈(陰謀論等)にしがみつくかもしれない。
この問題の本質は、現代社会の価値観と、
進化の過程でつくられた(無意識の)感情が、
常に整合的であるとはかぎらないこと。
解決困難な社会問題の多くはこの衝突から生じる。
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うーん、“鬼”は手ごわいですね。