【分断ではなく結束を目指す】
大注目のアメリカ大統領選挙は、接戦を制して、
ジョー・バイデン前副大統領が勝利宣言をするに至りました。
バイデン氏は「分断ではなく結束を目指す大統領になる」とし、
「前に進むために、互いを敵とみなすのはやめなければいけない。
私たちは敵ではない。私たちは米国人だ。
~この厳しい悪夢の時代に今ここで終わりを告げよう。
民主党員と共和党員が互いの協力を拒否したのは、
われわれの制御が及ばない不思議な力によるものではない。
全ては決断であり、私たちの選択に尽きる。
私たちは協力することを選択できる」と訴えました。
(宣言の日本語訳は11/8日経電子版より)
また、副大統領になる見込みのカマラ・ハリス氏も、
「私が初の女性副大統領になるかもしれないが、最後ではない」と語りました。
単純な感想ですみませんが、
2人ともカッコいいなーと思いました。
人は理想だけでは生きていけないと言いますが、
多くの人々、しかも多民族国家を運営するには、
包括的で普遍的な理想なり理念がないと立ちゆかないでしょう。
新政権には頑張ってほしいと心から期待します。
振り返って、日本の政治家の言葉がなかなか響いてこないのは、
「隣の芝生は青く見える」だけなんでしょうか……。
【多様性は無知を減らす】
ただ、それでも多くの人たちがトランプ大統領を支持したのも事実。
バイデン氏は大統領選史上最高の7500万票を得た一方、
トランプ大統領も7100万票と、オバマ前大統領を上回る票を獲得しています。
事実に反する主張があっても、大衆迎合、自国第一という
“本音の政治”を進めるトランプ氏の支持層は堅固です。(11/9日経電子版)
分断は根深く、修復は困難という声も少なくありません。
多様な活力の結集が多民族国家のメリットとするなら、
多様ゆえの分断がデメリット。報道を見る限りでは、
そのデメリットが強くあらわれている感じです。
多民族国家は根本のところで成立しないのでしょうか?
いろいろな意見があるでしょうけど、
私には、これに関して忘れられない本があります。
ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』です。
著者のブレイディみかこさんは、1965年福岡市生まれで、修猷館高校卒業。
現在、イギリス在住の保育士、ライター、コラムニストという方です。
『ぼくはイエローで~』は大きな話題を呼び、
2019年のノンフィクション本の本屋大賞も受賞しました。
読まれた方も多いのではないでしょうか。
イギリスの中学校(11歳~)に通う息子
(父親はアイルランド人)が直面する、
格差や差別、アイデンティティ等の問題を、
時にユーモアを交えて綴った本書は、
子どもたちに教えられることも多く、
重たいテーマをとても“おもしろく”考えさせてくれました。
「多様性っていいこと」と学校で習った息子が、
どうして多様性があるとややこしくなるのか母親(みかこさん)に尋ねます。
母「多様性ってやつは物事をややこしくするし、
喧嘩や衝突が絶えないし、そりゃないほうが楽よ」
息子「楽じゃないものが、どうしていいの?」
母「楽ばっかりしてると、無知になるから~
多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどくさいけど、
無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う」
このメッセージは、沁みましたねえ。
分断はある意味簡単で、結束には“力”が必要です。
でも、人間にはそれができる。
バイデン氏ではありませんが、
「私たちは結束することを選択できる」
どれだけ時間がかかるのかわかりませんが、
その志は持ち続けたいと思っています。