【「けなし愛」ならまだしも……】
アメリカ大統領選挙が1週間後に迫ってきました。
世界中が注目していますが、
先日(10/22)の『NHKニュースウオッチ9』で、
今回の選挙費用(大統領選+議会選挙)は、
共和党・民主党合わせて110億ドル(約1兆1,500億円)に
上るという分析が紹介されました。
過去最大だそうです。
コロナ禍で選挙活動が制限されているのに?
という疑問はごもっともですけど、
逆にその分、広告費にあてられているだろうというのが、
連邦選挙委員会の見方です。
両陣営ともテレビやネットでPR動画を量産しています。
大統領選挙を研究している明治大学の鈴木健教授によれば、
引用されたり、シェアしたりする人がいて、
お金がかかっても、効率がいい選挙戦略と言えるとのこと。
特に今回は、ネガティブキャンペーンが得意な
トランプ大統領が不利な状況にあるので、
余計に促進されているそうです。
アメリカ大統領選挙は「応酬合戦」なので、
ネガティブキャンペーンで攻撃を受けたら、
根も葉もないことなら沈黙せず即やり返す必要があるとも。
新型コロナウイルスの感染者数、死者数ともに世界最多のアメリカで、
「やられたらやり返す」応酬に巨額の資金がつぎ込まれ、
両陣営の(先鋭的な)支持者たちが衝突し合っている様子は、
「どこか違う」感が否めませんが、番組では、
別の選挙の動画が話題になっていることも紹介されました。
それは、ユタ州の知事選挙に立候補している、
共和党と民主党の候補が一緒に出演している動画です。
ただそれは、「応酬合戦」ではありません。
「相手を嫌うことなく、政治的な反対意見を言い合える」ことを
訴えるために、一緒に出演しているそうです。
2人は、「私たちには賛同できることがある。
互いをおとしめず討論できる」と言っています。
それぞれのSNSに公開されたこの動画は、
(報道時点で)再生回数が300万回を超えているそうです。
賛同できるところは賛同し、
違うところは、相手の立場を理解しつつ、
冷静に議論を進める――
その際、忘れがちだけど忘れてはいけないのは、
理解と賛成は違うということだと思います。
必ずしも理解すること=賛成すること、ではありません。
それを混同すると、賛成できない、納得できないものは、
短絡的に見下して排除することになってしまいかねません。
賛成はできなくても、相手の立場や理由を理解することは怠らない。
その上で、これこれこういう理由で反対、と言う。
しかも、対立している双方がお互いに。
そうすれば、双方にとって納得できる妥協点が見つかるかもしれません。
ユタ州知事選挙の両候補者が見せてくれる姿は、
本能的というか、感情的というか、
「0か100か」の排他的な対立が目につく中、
人間の能力というようなものを信じたい気持ちにさせてくれる、
いいニュースだなあと思いました。