【教育機会の差は続く?】
新型コロナウイルスの感染再拡大が連日報じられています。
緊急事態宣言こそ出されていませんが、その時と同様の注意喚起もなされ、
感染防止と経済活動の間で、何とも難しいバランスが求められる日々が続いています。
そうなると心配になるのが学校。
現在、夏休みを短縮して授業の遅れを取り戻す動きもありますが、
夏以降、もしまた全国一斉に休校要請となると、大変な事態になるでしょう。
その対策として期待が寄せられているのがオンライン授業なんですが、
小中学校への機器配備の足並みがそろっていないことが、
日経新聞の調査でわかりました。(7/23付日経電子版)
7月に東京23区と道府県庁所在市・政令市の計74自治体に、
公立小中学校の端末の確保状況などを調査しています。
経済協力開発機構(OECD)の2018年の調査で、
学校でのデジタル機器活用度は、日本が加盟国中最下位という現状もあり、
政府は2021年3月末までに1人1台を配備する方針を決め、
自治体が端末を購入する際に、1台当たり4万5千円を補助するとしています。
すでに1人1台の端末配備を完了しているのは、東京都渋谷区のみ。
年内までと回答している自治体も、渋谷区を含め12自治体にとどまっています。
九州・山口地方の状況は以下のようになっています。
◆小中学生1人1台の端末配備時期
《12月まで》福岡市、北九州市
《来年3月まで》山口市、熊本市、大分市、宮崎市、那覇市
《今年度困難》鹿児島市
《未定》長崎市
《計画なし》佐賀市
計画はないと回答した佐賀市は、
「整備費や維持費の負担が重い」とコメントしています。
さらに、機器の自宅への持ち帰りを認めるのは53自治体、
「通信設定などの指示が難しい」との回答は35自治体に上りました。
「家庭などへの使い方の丁寧な説明が求められる」と記事では指摘しています。
新型コロナウイルス感染防止という大義があっても、
なかなか進まないオンライン授業環境整備。
感染状況の地域差が反映されているわけでもなく、
東京都江東区、中央区、名古屋市が「今年度困難」、
東京都新宿区、荒川区、品川区、港区が「未定」となっているなど、
感染者数が多い大都市といえども、取り組みに差があるようです。
配備の制約として最多の24自治体があげたのが、「機器の在庫不足」でした。
メーカー側も努力していますが、世界的な需要増で余裕はないという声もあるようです。
また、「資金不足」をあげたのも7自治体ありました。
3月の一斉休校の時も問題になった、
オンライン環境の違いによる教育機会の差は、
また表面化することになるのでしょうか。
もちろんそうならないように願うばかりですが。
【学校は行けないけど勉強はしたい】
オンライン授業の意義は、新型コロナ感染対策だけではありません。
不登校の生徒に学びの機会を与えているという面もあります。
6/12に放送されたNHK『ニュースウオッチ9』では、
高2男子の「勉強すると気持ちが良いのが発見だった。
完全に自由になると勉強しないし、
学校に行くとなると強制されすぎてまたやる気をなくす。
オンライン授業がちょうどよかった」
という声が紹介されていました。
熊本市の中2男子も、オンライン授業には毎回欠かさず出席し、
宿題もやり、質問も活発にするようになったそうです。
熊本市立富合中学校・阪本朱希子教諭は、
「すごく勉強したい、飢えているんだというのがわかったので、
一生懸命教えてあげたいという気持ちが増した」
と手応えを語っていました。
不登校の児童・生徒は全国で約22万人(2018年度・文部科学省)。
その子どもたちに学びの機会を保障するためにオンライン授業が有効という声は、
各地の学校から寄せられているそうです。
ただ、オンライン授業は先生たちが空いた時間をやりくりして対応しているので、
先生の負担がこれまでより重くなっているという問題もあります。
休校が終わり、通常の授業が再開されれば、オンライン授業も終了するのが一般的。
不登校の生徒の保護者からは、やはり継続を求める声も出たそうです。
『ニュースウオッチ9』の有馬嘉男キャスターは、
「いわゆる不登校に限らず、病気の治療などいろんな理由で
学校に行けない子どもたちはたくさんいる。そんな子どもたちにとっても、
オンライン授業は大事な学びのチャンスになると思う。
新しい学びの選択肢として整備していく意義はあるように思う」
とコメントしていました。
今回のコロナ禍では、学校に限らず社会全体でオンライン化に焦点が当たり、
導入が進んだところもありました(一方で、揺り戻しもあるようですけど……)。
何でもオンラインのほうがいいとは言いませんが、
コロナ禍を逆手にとって社会を進展させ、
「やられてばかりじゃないぞ!」といきたいものです。