【東アジア依存からの脱却が課題】
連日報道されている新型肺炎は、各方面に影響を及ぼしています。
そんななか、2/13付日経電子版で、
『「観光立国」の潮時 軌道修正迫る新型肺炎』という記事が掲載されました。
「2020年に訪日外国人客4000万人」という政府目標の達成が危ぶまれ始めたという趣旨です。
新型肺炎の影響が大きいのは間違いないんですが、
ならばそれが終息すれば大丈夫なのか、と問題提起されています。
政府の目標は、2020年の訪日外国人客が4000万人、
インバウンド消費額が8兆円(1人当たり20万円)です。
ところが2019年の実績は、訪日外国人客3188万人、
消費額4.8兆円(1人当たり15万円台)にとどまっています。
不振の原因の1つが、近隣地域への依存度の高さ。
訪日外国人客数トップ4である中国、韓国、台湾、香港の比率は、
2019年で7割にものぼります。
加えて、近隣からの旅行者は滞在も短期間で、
消費額も低い傾向が強いとのこと。
さらに、今夏には東京オリンピック・パラリンピックがあるものの、
ロンドン五輪では、交通の混雑や宿泊費の高騰を見越し、
外国からの旅行者はむしろこの時期を避ける動向があったそうです。
記事では、「今年のインバウンド消費が不振に終わるとしたら、
新型肺炎の影響ではなく、長年のひずみが顕在化したものと考えるべきだ」
と指摘しています。
その上で、「政府が今後、本気で取り組むべきなのは
欧米、オーストラリアなど遠方からの長期滞在客の開拓による
東アジア依存からの脱却」と提唱しています。
その場合大事なのは、「外国人自身の声をきちんと聞き、
マーケットに合わせたサービスを提供する」こと。
逆に各自治体が「自分たちの売り出したいもの」を
地産地消や地方創生のかけ声のもとでむりやり押しつけたり、
政府主導で観光・宿泊施設など巨大なハコものを
整備したりするのは効果が乏しい、としています。
もちろん頑張らなきゃいけないのは政府だけではありません。
一例として、新型肺炎の拡大を防ぐため、
一部の旅館では朝食のバイキングをやめ、個別の配膳に切り替えました。
バイキング形式は、提供側には労力がかからない便利な手法です。
しかし、勝手がわからない旅行者が料理を持ち帰ろうとしたり、
ベジタリアンやイスラム教徒が、「食べたい料理」と「食べられない料理」が
隣接して置かれているのに嫌悪を感じるといった問題も生じているそうです。
食事を部屋まで運ぶ旧来の日本旅館のサービスが
「他の客と接さずに済み安心だ」と喜ばれているとの声もあり、
新しいアピールポイントになるかもしれないと、記事では指摘しています。
「訪日外国人客は増え続けているから、まあいいんじゃない」
なんて単純に考えていた私には、いろいろ考えさせてくれる記事でした。
【お詫びと訂正】
本欄1/24付「2019年訪日客は前年比2.2%増、伸び率トップは東アジアではないあの国」中で、
日本政府観光局(JNTO)発表の2019年訪日外国人客数(推計値)の前年比伸び率トップを
英国(27.0%)としましたが、正しくはベトナム(27.3%)で、英国は2番目でした。
お詫びし、訂正させていただきます。