【勇気ある異議表明】
留学したアメリカの高校のロゴマークが、
原爆のきのこ雲を模したものだったら……
8月6日付の西日本新聞で、胸を打つ記事がありました。
福岡県大牟田市の高校3年生、古賀野々華さんが留学したのは、
米ワシントン州リッチランドにあるリッチランド高。
同高のロゴマークは「R」の文字にきのこ雲をデザインしたもので、
いろいろなところに登場します。
「なんでそんなことを?」というのが日本人の感覚でしょうけど、
その町では、長崎に投下された原爆のプルトニウムが生産され、
核関連産業が町の経済を支えてきた歴史があるとのこと。
町が誇る特産品、というほどの認識なのでしょうか。
古賀さんが留学して半年、米国史の授業で多くのクラスメートが、
「原爆のおかげで戦争が終わった」と考えているのを聞いて、
違和感が問題意識に変わったといいます。
帰国が迫った5月末、校内放送に出演し、思いを伝えました。
「きのこ雲の下にいたのは兵士ではなく市民でした。
罪のない人たちの命を奪うことを誇りに感じるべきでしょうか」
日本では原爆の犠牲者を悼む「平和の日」があることも紹介し、
「きのこ雲は、爆弾で破壊したもので作られています。
きのこ雲に誇りを感じることはできません」
と締めくくったそうです。
古賀さんのメッセージは、大きな反響を呼びました。
「あなたを誇りに思う」「メッセージがなければ
日本側の意見を知ることは一生なかった」と、
勇気ある行動を称えた同級生もいたそうです。
古賀さんは「私はロゴマークを変えさせたかったわけではありません。
ただ、(原爆を)投下された側の気持ちを知ってほしかった」と話しています。
さらに「批判を恐れずに、自分の意見を伝えることの大切さを学びました」とも。
長年使われてきたロゴマークを否定するようなことを公然と言うわけなので、
真意を汲み取ってもらえない恐れも、当然あったと思います。
私も、古賀さんの勇気にいたく心を動かされました。
そんな古賀さんをサポートした人たちにも感服です。
校内放送に出演してメッセージを伝えるよう勧めたのは、
古賀さんが原爆の扱いに問題意識を抱いた様子に気づいた教師だったそうです。
さらに、古賀さんの思いを英語にするに当たって、
ホームステイ先のホストマザーも協力してくれたとのこと。
まあ、ほんと、すばらしいですね。
留学の効用は折に触れ申し上げてきましたが、
語学習得という直接的なメリットに加えて、
やっぱり異文化と深く交流する経験は、
自分を大きく成長させてくれる機会になるんだと、
改めて感じ入った一件でした。